「デジタル教科書教材協議会設立シンポジウム」に参加をして [DiTT]

日時 平成2年7月27日(火)13:30~16:10
会場 明治記念館(東京都港区元赤坂)

ここで話題にしている「デジタル教科書」とは,電子黒板で使う提示型デジタル教科書ではなく,ipadのような端末を一人一台ずつもつという「学習者用デジタル教科書のことです。」

1 挨拶
元東京大学総長    小宮山 宏
・ 知識爆発と細分化で処理しきれない時代→ITをうまく使う。
・ デジタル教科書→素晴らしいコンテンツを速く出すことがカギ。

総務大臣       原口 一博
・ 単に教科書の電子化ではない。お互いを育む学びに。
・ 2015年までに「光の道」を。フューチャースクール10校で検証。

文部科学省参事官 斎藤(鈴木副大臣の代理)
・ デジタル教科書教材→21世紀の子どもたちにふさわしく多面的に検討。
・ コンテンツも先生のスキルもまだまだ→学校教育の情報化骨子策定
・ 6月IT戦略行程表→モデル事業を実施。

慶應義塾大学教授   中村伊知哉
・ アメリカ,韓国より遅いが,政権交代で政府が本腰を入れた。
・ 韓国は2013年に開始。シンガポール,イギリス,アメリカも。
・ 企業体の集まりだが,教育現場と連携していく。
・ コンテンツ,クラウド,ネットワークの整備→未来モデル委員会と普及啓発委員会。各種ワーキンググループの設置。
・ コンテンツ開発→日本から世界の教育を変えていく意気込みで。

講演1 「情報化社会におけるデジタル教材の在り方」マイクロソフト社長  樋口 泰行
・ 日本は「やばい」とここ1~2年で実感。競争力低下。
・ 内向き,ガラパゴス,エネルギー欠乏症。
・ 人間形成+国が強くなる人間を育てていかないといけない。 (実社会での機動力,グローバル感覚)
・ 英語力とICTスキルは,すでに基礎。その上に,問題解決力とコミュニケーション能力,想像力(クリエイティビティー)がいる。
・ デジタルで,問題解決力とコミュニケーション能力を。
 ①知識ではなく,正しい情報をとる力→問題解決力。
 ②ネットワーク上で繋がっている人の力を活かす力→コミュニケ力
・ 教材イメージのプレゼンデモ (東芝 リブレットw100,CM1)
例 松尾芭蕉の句→平泉のデジタル地図→動画・音声。句を詠んだ時代の星空,ハイライト,書き込み,クイズのクラス集計,個人履歴,アクセシビリティー対応。拡大・縮小。手書きノート対応,ワードでプリント,子ども向けアイコン
・ 将来像 クラウドから,家でも学校でも連携。

講演2  情報革命と教育変革で実現する日本の成長戦略  ソフトバンク社長   孫  正義
・ 30年後の日本の姿→医療費倒れ,財政悪化,競争力低下,下がり続ける賃金,GDPの低迷
・ 今の日本に必要なもの
理念   日本人が豊かで幸せで自信と活力に溢れる社会
ビジョン 5年以内に競争力を取り戻す。(IT,金融,知識)
・ 今の4年生が30年後に企業の中核の40歳になる。その時に役に立つ人材に育てなくてはならない。
・ 必要なもの→リーダーシップ,交渉力,検索力,分析力,競争意欲,プレゼン能力,思考力
・ 30年後の日本の競争力を支える武器としてデジタル教科書を学生と教師2000万人に無料配布すべし。
・ 子ども手当から,280円/月。6年リース。通信代は無料にする。そうすれば,新たな予算はいらない。
・ 教科書は全部で2.2Kg。電子教科書は0.7Kg。軽い。
・ デジタルコンテンツの充実について教育現場のニーズは92%
・ 130万人の先生方に副教材を作らせてクラウドに挙げて子どもに人気の教材を自動でランキングする。モチベーションも高まる。
・ NHKアーカイブスを活用する。子どもたちは無料で見られる。
・ 教育ツイッターを先生と子どもで行う。
・ 教育変革の主役は,教師と子ども。
・ ○付け,添削事務は,PCにさせる。
・ 明治維新の5年で,電信,廃藩置県,義務教育,郵便,鉄道は整備された。韓国は2011年からデジタル教科書の使用を義務化する。日本もせめて5年でやらねばならない。
・ 2009年原口ビジョン,2010モデル校小・中・高100校 2015年 デジタル教科書完全整備
・ モデル校には,マイクロソフトもソフトバンクでもただで出す。議論する暇があったらまずは,お試しキャンペーンの用にやってみること。
・ 教育は文部科学省だけの管轄ではなく,日本国民全体が関心をもって進めなければならない。

パネルディスカッション
パネリスト
元東京大学総長    小宮山 宏 ソフトバンク社長   孫  正義
東京学芸大学教授   藤原 和博  マイクロソフト常務  大井川和彦
ビデオメッセージ: 陰山英男(副会長) パソコンの父 アランケイ
コーディネーター:慶應義塾大学教授   中村伊知哉

藤原:
・日本の教育は正答主義がはびこっている。これからは,情報編集力が重要。
①子どもたちの発信を増やす授業を
②反復学習で間違うと人は怒るが,デジタル教材は怒らない。熱心な教師ほど怒る。セルフエステーム(自己肯定感)を高めるためにも反復学習はデジタル教材で自習させる。
③デジタル教科書はフォーマットが重要。PDFを流し込むだけではダメ。
陰山:
「今,なぜデジタル教科書なのか」
  ①各国が競争力を高めるために教育に力を入れるようになってきた。
  ②PCが本当の意味で教育に使えるものに急激に進化してきた。
「デジタル教科書の良さ」
  ①子どもにとっては,自分にふさわしい内容を選べる。
②教師にとっては,自分の指導に合うコンテンツを選べる。
「会へのメッセージ」
・世界のトップランナーとしての日本の教育システムを作ろう。 

小宮山:
・ 時間がない。スピード感が重要。2013年までに相当な規模で実施されるようにしないと間に合わない。
・ 大きな可能性が語られるが,語られていない難しい点もある。
① 先生が使いこなせるか。
② 45分×6時間×毎日 日常ずっとやることが大事。
③ エクセルが出たとき,微分の演習が無くなった。このように,それ以前のものが役立たなくなることが現場にも起こる。
・ これからの教育資源は,2つ。社会人が教育にもっと参加することと,ICTの活用。

孫:
・ 文科省の委員が密室で決めるのではなく,国民を巻き込んだ議論に。
・ 副教材ではなく,あくまで教科書。
・ 紙をすべて無くすのかという意見もあるが,エコのためにもそう。習字や絵をかくなどは紙も使う。

藤原:
・ ITを使うとコミュニケーションが薄くなるという批判は当たらない。人間がやらなければならないことがはっきりしてくるだけ。
・ 和田小学校では,DSでドリルを進めることで,論理脳を鍛え,生活指導的な面でも効果が上がっている。

孫:
・ 議論しているのでなく,モデル校をどんどん作り,検証する。
・ 抵抗勢力は30年後にはいない人。若い先生がどんどんやるべき。

大井川:
・ 現状では,コンテンツが足りない。ハードも作る機運が高まっている。 
・ 縮み指向の社会でもチャレンジする人はいると,今日の出席者の数と熱意で思う。日本初のビジネスモデルにつなげていきたい。

小宮山:
・全部が一度は無理。やる気のある校長や教育委員会を見付けて,実験 ・検証して,やらなきゃいけなくなるように成果を出していく。 

孫:
・130万人の教師のうち10人が命を捨てて取り組め。そうすれば,山は動く。  

感想・ 学んだこと
・ 産業界の熱は予想以上に熱く,また,切迫した様子だった。「時間がない」と繰り返していたのが印象的。現場との隔たりを感じた。
・ デジタル教科書については,総務省の「原口プラン」を皮切りに,急ピッチで進んでおり,私も自分なりに活動しているが,文部科学省との熱の差があり,実現の方向にはいくにしても,スピードについては疑問が残る。
・ 市小研で,今年度までに進めている研究「わくわく情報教育モデル」は①電子黒板,②HPの掲示板,③情報モラルの3本柱だが,一人が一端末もつ「学習者用デジタル教科書」だとこの3つが同時に実現できる。
・ ICTを活用した教育改革という視点で言うと,これからのキーワードは,2つと確信。教師の事務仕事などにかかわる「校務の情報化」と,児童の学びにかかわる「デジタル教科書」の導入。どちらも重要であり,車の両輪である。
・ 児童の学びにかかわる「情報機器の効果的な活用」については,電子黒板,実物投影機,プロジェクター,デジカメなど,これまで普及してきた情報機器の活用は継続進化するが,「デジタル教科書」の導入で,授業をかなり根本的に変えることになるだろう。
・ 目標は2015だが,2020までには確実に変わることになる。ただ,現場では98%の教師が全く想定していないのが現実。教育現場にいる我々も先を見据えて学ぶ必要がある。

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